2022年度2号「つながる、ひろがる ヒト・モノ・コト」インタビュー

2022年度2号「つながる、ひろがる ヒト・モノ・コト」インタビュー

2022年9月1日

三鷹まちづくり通信2022年度2号(2022年9月1日発行)

「三鷹が生まれ故郷になる子どもたちに伝えたい。」三鷹産の農産物を使ったこだわりスイーツを提供するお店を紹介

 新宿から電車で20分という立地にある東京都三鷹市は、緑豊かで住宅地の中に畑が点在する都市農業が盛んなまちです。その三鷹市内でお店を営む「パティスリー うーおの森」と「wata 焼き菓子」は、生産者の顔が見える三鷹の農産物を使ったスイーツづくりに取り組んでいるお店です。
 なぜ、積極的に三鷹の食材を使うようになったのか、そのこだわりや熱い思いを伺いました。

お菓子で「身近な農家さん」を紹介

■インタビュー 「パティスリー うーおの森」オーナーシェフ 魚住祥一郎さん、魚住真理子さん

 「パティスリー うーおの森」は2020年10月に三鷹市の野崎から井口に移転し、2022年の今年、オープンから11年目を迎えました。オーナーシェフ魚住祥一郎さんは中央線沿線育ちで、学生時代を過ごした場所で独立したいと、三鷹にお店を構えたそうです。

 「お菓子を通じて、材料を作った人、生産者の熱意を伝えたい。農家さんを紹介したいです。」と祥一郎さんは語ります。ケーキに生産者の名前をつけているのは、お菓子を買ったお客様が生産者を訪れるような、つながりのきっかけになればという想いから。「遠くに行かなくても、三鷹でブルーベリーもいちごも採れる。うちで使っているブルーベリー農家さんのところで、家族でブルーベリー狩りを楽しんだと、お客様が報告してくださいます。そういう会話がとても嬉しい。」と真理子さん。

 祥一郎さんは子供の頃を振り返りながら「畑が宅地に変わり、ぐっと減ってくる様子を見てきた。もったいないなと思う。宅地が増えて、三鷹に移り住んだ方がお客様になってくださるのは嬉しいが、農地が減るのは悲しい。みんなが幸せになって、win-winになれたらいい。」と胸の内を話してくれました。

パティスリー うーおの森のみなさん
パティスリー うーおの森のみなさん

三鷹の都市農業を応援したい

 祥一郎さんは、開店当時からお菓子の材料に地域の農産物を使いたいと思っていましたが、どうやって農家さんにアプローチしたらよいかわからないまま数年が経ち、お店の経営も厳しい状況が続きました。
 そんな時、お店の駐車場の地主さんに紹介してもらったのが、近くでブルーベリーを栽培する吉野果樹園さん。同じ頃、JA主催の七夕イベントに向けて三鷹のものを使ったデザートを作って欲しいという依頼があり、これも何かのご縁だ、と感じたそうです。そこから、同じ吉野の姓を持つ、平飼い卵を生産する吉野農園さん、キウイ農家のよしの園さんにも出会い、三鷹の生産者とのつながりが広がります。
 若い世代の3人の吉野さんが、社会人経験を経た後、後継者として積極的に農業に関わり始めたタイミングも同じ頃。祥一郎さんは、農業を担ってきた親を尊敬し、新しいことにも取り組む若手農業者の人たちから熱い想いをひしひしと感じました。「開店当初も地元の友達が来店してくれ、助けてもらったのですが、三鷹の農産物を使ったケーキを作ったら、農家さんがどんどん来店してくれ、口コミで広めてくれました。さらに地元への感謝が生まれましたね。」と話す祥一郎さん。3人の吉野さんたちと同じ野崎地区ということもあり、一緒に都市農業を盛り上げて行きたいと気持ちが湧きました。

 コロナ禍で、家族の結びつき、地域の結びつき、小単位での絆の大切さが見直されるようになりました。仕事も大事、コミュニティも大事という時代に、他所から三鷹に越してきて、三鷹のことをまだよく知らないお客様に伝えたいと、お店の動画「うーおのお菓子ができるまで」ではお菓子より生産者をメインに紹介しています。
 「材料はお客様のすぐ隣の畑で作られている、三鷹はそういう魅力があるまち。うちは、お店をオープンして11年目ですが、農家さんは100年単位で畑を守っています。それを心から尊敬しています。ストーリーをお客様に伝えることで、三鷹の農業を通してお店の価値を出していきたい。それが、みんなの幸せにつながればいい。」と祥一郎さんは志を語ります。

吉野果樹園さんのブルーベリーを使ったブルーベリータルト
吉野果樹園さんのブルーベリーを使ったブルーベリータルト
よしの園さんのキウイを使ったキウイショート
よしの園さんのキウイを使ったキウイショート

“お互いに無理なく”が長く続けるコツ

 最近では、三鷹の農家さんとのコラボとして、えびさわ農園さんの「エディブルフラワー(食べられる花)」を使ったケーキの販売を開始しました。花は鮮度が命。仕入れるタイミングには気を遣います。お店までの通勤途中に花を受け取ったり、ケーキを予約販売にするなど、工夫をして対応しているそうです。「農家さんとは、お互いに無理をしないことが長く続けられるコツ。こちらの希望数量と、供給していただける数量に差違があったり、納品手段などの課題もありますが、農家さんは人手に限りがあるので、お互いの協力体制が無いと長く続きません。材料を使わせていただいている、という想いでやっています。」

 うーおの森には、材料に三鷹のものが使われていることで、お菓子を身近に感じ、来店するお客様が増えました。「子どもたちは三鷹が生まれ故郷になるので、お菓子と地元の両方好きになって欲しいと思っています。買いに来るお客様、家族を通して子どもたちにも元気になって欲しいですね。」と、次の世代も見据えています。
 今後の展望を伺うと「お店が三鷹の西にあるため、お客様も三鷹の西側に住む方が多いです。三鷹全体で知ってもらいたい。」とのこと。SNSの情報発信にも力を入れています。
 「三鷹では皆さんが応援してくれている。三鷹の外にも有名になりたいわけではなく、三鷹に住む方が、“コレ、うちの地元の有名店”と自信を持ってプレゼントできるお店にならなきゃなと思っています。」と、今後も腕を振るいます。

三鷹の農産物を使った人気商品をご紹介いただきました!
三鷹の農産物を使った人気商品をご紹介いただきました!

想いを「味わい」で伝える

■インタビュー 「wata 焼き菓子」横田明子さん

 「wata 焼き菓子」は三鷹市新川の杏林大学医学部付属病院前にある、隠れ家のような小さなお店です。新川育ちのパティシエのご主人が、ひとつひとつ丁寧に手作りした商品が店頭に並びます。

 「子どもでもお小遣いを握りしめて、買いに来れるお店でありたい。」と奥さんの明子さん。昨今の材料の高騰には包装コストを抑えるなど、良いものを安く提供するための工夫を凝らしています。明子さん自身もお子さんを持つお母さん。「小さなお客様も大事にしています。」と笑顔を浮かべます。

 明子さんは、「主人が、野菜の軒先直売所を覗いて、“これを使いたい!”と直感的に感じたそうです。」と、お菓子に地域の農産物を使うようになったきっかけを振り返ります。そんな頃、ご主人の学校の先輩にあたる近所の珈琲店の店主から、「他の生産者も紹介するよ」と声をかけてもらい、それから三鷹の生産者とのつながりが広がっていきました。そこからはJA東京むさしの三鷹緑化センターなどで三鷹の野菜や生産者の情報を勉強し、直接アプローチしていったそうです。

 クリスマスに限定販売したシュトーレン“三鷹の恵み”は、お店の集大成として“オール三鷹”を目指して商品開発された、原材料の大部分が三鷹産のシュトーレンです。お客様に「食べ比べしたけれど一番美味しい」と言われるほど好評でした。その理由を「生産者さんが一生懸命育てたものを、こちらも誠意を込めて作りました。それが凝縮されたからかな。」と、胸を張ります。
 シュトーレンを食べたお客様が三鷹産の農産物に興味を持ち、家でも使ってみようと手を伸ばすきっかけになればと、生産者の名前を添えました。生産者の方も「これだけ三鷹のものをよく集めたね。こんなに贅沢なものはないよね。」と喜んで、SNSでシェアするなど、互いにお客様へアプローチ。ネット販売した方がいいよという声もありますが、「まだ三鷹市民全員にお店を知ってもらっているわけではない。まずは三鷹から。地元の人に来ていただきたい。」と考えています。

wata 焼き菓子 「wata 焼き菓子」横田明子さん
「wata 焼き菓子」横田明子さん

地域のもので、新たな挑戦

 生産者とのつながりから、次第に地域の催しに声がかかるようになりました。最近では、三鷹駅前の中央通り商店会が主催し、毎月第4日曜日に開催されている「M-マルシェ」や、新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出自粛を余儀なくされたご家庭と三鷹市内の飲食店や農家さんとを繋ぐ、地域密着の配達サービス「チリンチリン三鷹」(2022年7月30日で活動終了)に参加。
 北野の冨澤ファームさんで行われた親子収穫体験では、参加者に江戸東京野菜の一つである「内藤かぼちゃ」のパウンドケーキを用意しました。「お母さんがいつも家で作るかぼちゃの煮物やスープと違う形で食べてもらえる良い機会。声をかけてもらえて良かった。苦手な子どもが多い緑の野菜をお菓子にしたい。」と意欲が湧きます。旬の野菜で焼き菓子に使えるものがあれば、出来るだけ地域のものを使い、子どもに苦手な野菜を克服して欲しいそう。「野菜が苦手だった娘ですが、今では野菜が大好きです。農家さんに一緒に仕入れに行きたがるくらい、三鷹の農家さんが大好きみたいです。やっぱり子どもには地元を好きになってもらって、色んな経験をさせてあげたいですね。」と明子さんは嬉しそうに語ってくれました。

 お店の今後の目標は、キウイ。三鷹の農産物の代表ですが、火を通すことにより、生のフルーツにある美味しさが消える難しさもあります。キウイを使った商品はワイン、ジャム等、色々ありますが、焼き菓子も欲しいところ。明子さんは、「パティシエの主人は職人気質で、単に美味しいだけ、野菜や果物を入れただけでは満足しません。三鷹産キウイだから、このお菓子が出来た、と納得のいくものを作りたいと試作中です。丁寧に作っていることが伝われば嬉しいです。」と、教えてくれました。

 お店が大切にしていることを伺うと「三鷹の生産者さんが丹精込めて作ったこの材料を使っているから、こういう美味しいものが出来たというのが、お菓子を食べた人に伝わるといい。例えば、子どもたちが収穫体験で一生懸命収穫した野菜が、こんな美味しいお菓子になるよ、と説明して食べてもらうと子どもたちはとても喜びます。そして、このお菓子で使っている野菜は農家さんがこういう想いで作っている、とストーリーを感じてもらえるのが理想。」と想いを語ってくれました。小さな焼き菓子1枚1枚に、その想いが詰まっています。

うさくまクッキー・りすクッキー 定番商品に加えて、三鷹のとうもろこしを使ったスコーンや、ラズベリーを使ったタルトなど季節の商品が並んでいました。
定番商品に加えて、三鷹のとうもろこしを使ったスコーンや、ラズベリーを使ったタルトなど季節の商品が並んでいました。

■ wata 焼き菓子
所在地:東京都三鷹市新川6-9-11 松ビル1階
WEBサイト等:wata 焼き菓子ホームページFacebookInstagramTwitter

ライター:細川優子

愛するまち三鷹に目を向け、地域資源を活かして始めた新しい事業や、同じ目的・関心から生まれた集まりなど、さまざまな形で地域の活動に取り組む人を紹介します。

ライター:細川優子