過去受賞者の声

受賞者の皆様

2022年度 ビジネスプラン部門

最優秀賞

アフターコロナ時代の家庭の悩みをワンストップで解決する ~まなびナビの「窓口」~

まなびナビ合同会社
中河西 慎平 さん

増え続けている不登校児

文部科学省の調査によると、2020年の不登校児は20万人、2021年は25万人と1年で5万人もの不登校児が増えています。多様化する家庭環境や子どもたちが抱える問題が複雑化していることに加え、コロナによる生活環境の変化は子どもたちの学習環境にも大きく影響しています。さまざまな要因で、「学校の学習環境と合わない」と感じる子どもたちが増えている中で、子ども一人ひとりの学習ニーズに対応したいと考えます。

「子どもたちへ新たな学習の機会をつくりたい」という想いで会社を立ち上げた、まなびナビ合同会社代表の中河西慎平(なこうさい しんぺい)さんにお話を伺いました。
 

教育業界で「勉強すること」の本質を考えた

10年ほど学習塾の教育現場で仕事をされていた中河西さん。そこで見えてきたのは、子どもたちの学習の機会が家庭の収入に影響を受けてしまう現実でした。
学習塾に通うには、個別指導や受験シーズンには、毎月10万円以上の教育費が必要です。費用がかかるため、学びたい子どもたちや学ばせたい家庭のニーズに合わず、学ぶ機会を得ることができない家庭も多く見られます。

そのような中で5年ほど前に、家庭教師として独立しました。家庭教師をしていて見えてきたのが、登校が安定しない子どもたちがいること。学ぶ環境は学校が全てではない。学校以外で子どもたちが学ぶことを楽しめる仕組みを作り、できるだけ多くの子どもたちに対し貴重な学習機会をつくっていきたい。そんな想いで、2021年に「まなびナビ合同会社」を立ち上げました。

オンラインでの学習支援

現在は、オンラインプログラムを中心に、学校での集団生活に馴染めないと感じる子どもに対し、一人ひとりの個性に合わせたペースで「まなびナビ」のカリキュラムを提供しています。「まなびナビ」は、不登校の子どもにフォーカスしただけではなく、学習塾としての利用など、勉強すること自体を楽しめるサービスにしていきたいと考えています。
専門講師による、国語・英語・数学・理科・社会などの学習に加え、施設などに入所している子どもたちへの教育サポートや、一人ひとりが抱える課題に対し、対面での支援もしています。さらには、子どもの課題に向き合う保護者に対し、“お話会”や“交流会”などを開催し、子どもたちを取り巻く環境にも配慮したサービスを展開しています。

中河西さんからのエールです。

学びに対する「前向きな姿勢」が人生をつくる。これがまなびナビの理念です。
何らかの理由で学校に行くことができなくても、それを理由に学ぶことを嫌いになってしまうのはもったいない。
学校以外で一人ひとりに合った、学ぶ環境があれば、どんな子どもたちも自分の力で人生を切り拓いていくことができると信じています。勉強が嫌いでも「学ぶこと」は楽しいことです。ぜひ諦めずに自分の未来を作っていってほしいと思います。

優秀賞

ヒトとワンコがシェアできる「ペット共生食」で真の家族化を支える事業

株式会社 ワンズデイリー
森崎 成仁さん

ペットは「飼う」から「共生する」時代へ

かつてはヒトが犬や猫を「飼う」という意味合いが強かった関係性が、近年変わり始めています。
核家族化や、コロナ禍でペットを迎える人が増え、今では多くの人がペットを家族として認識し、家の中で一緒に暮らしています。まさに「ペットの家族化」であり、「ヒト」と「ペット」の関係ではなく、犬も猫も「家族の一員」として共に生きていく大切な存在になっています。
しかし、その一方でペットの食や健康を意識している人はどのくらいいるでしょうか。同じ家族としてペットの健康寿命を守ることは、飼い主の責任だと考えています。

そこで、ヒトとワンコがシェアできる「ペット共生食」事業を展開している、株式会社ワンズデイリーの森崎 成仁(もりさき しげひと)さんにお話を伺いました。

愛犬の不調をきっかけに犬の健康への意識が変わった

森崎さんの愛犬の陸(リク)が2歳になる頃、陸のおなかのあたりに赤い湿疹ができて痒がるようになりました。病院に連れていくと、「食べ物のアレルギーによる湿疹」と診断を受けたそうです。その後、森崎さんは犬の健康について調べ、無添加の手作りごはんを作り始めたところ、みるみるうち陸の湿疹は改善し、元気になっていきました。この出来事をきっかけに、日々の食事がペットに与える影響について考え始め、「ペットも人間と同じように、食が健康をつくる」ことを痛感しました。

森崎さんは、ペット食として販売されている商品のほとんどが「食品」ではなく、「雑貨」として販売されていることを知り、驚きました。そこで、人間の食と健康を扱うフードコーディネーターをしていた奥さんの繭香(まゆか)さんとともに、「犬が安心・安全に食べられるおやつとごはんを提供する事業」を立ち上げ、スタートさせました。

ヒトとワンコがシェアできるおやつ

株式会社ワンズデイリーが提供する「ペット共生食」は「雑貨」ではなく「食品」であり、ヒトと犬にとって安心・安全な食事です。また、犬の健康に寄り添った、身体にやさしく無添加で人間も犬も美味しく食べられることを重要視して作っています。さらに保健所の審査を受け、人間の「食品」として販売できる安全な品質のものだけを製造しているため、人間が食べても美味しく、さらに犬にとっても体にやさしく美味しいおやつです。犬と同じものを食べることに抵抗を感じる人もいるそうですが、「犬の食べもの」、「人間の食べもの」と区別せず、ペットと一緒のおやつで安心できる幸せな時間を過ごしてほしいと考えています。

ペット共生食で文化を変える

ペットは家族の一員として、我が子のように愛情を注いでいきたい存在です。共に暮らし、時には感情を共有して、できるだけ長く一緒に生きていきたいと願う方も多いでしょう。「同じ釜の飯を食う」という言葉のように、ヒトとワンコのどちらにとっても安全で美味しい食事をシェアすることで、ペットの真の家族化を目指し、場所や時間だけでなく心を共にするきっかけとなってほしいと思います。

三鷹発ベンチャー賞

エシカルを三鷹から世界へ

Menary
木住野 舞 さん

赤いリップは女性に自信と美しさを与えます

赤いリップをつけるだけで、背筋がピンと伸びて自然とポジティブな気持ちになります。そしてそれがスイッチとなって、明るい笑顔になり、周りの人にも笑顔が広がります。赤いリップをつけることは、素晴らしいパワーをもっています。
そう語るのは、日本初のプラスチックフリーのエシカルリップを開発したMenary代表の木住野舞(きしの まい)さん。
未経験から起業し、日本初となる商品の開発は苦労の連続。完成までに1年以上を費やして、こだわり貫いた木住野さんの想いには、赤いリップをとおして世界に届けたい、様々なメッセージが込められていました。

海外生活で見えてきた女性としての生き方

海外ボランティアやシンガポールで働いた経験のある木住野さん。木住野さんにとって、読み書きができることや、教育を受けること、そして自分自身が希望する道への選択肢があることは当たり前でした。しかし、海外生活で見えてきたのは、教育格差や人種差別の被害に遭っている女性たちでした。海外の女性の生き方や考え方に触れ、自分自身の生き方について考えさせられたそうです。さらに、シンガポールの勤務先のホテルで人と接するうちに、メイクが与えてくれるパワーにも気づきました。特に赤いリップをつけることで気持ちがポジティブに高められ、自分らしさを表現できることに気づき、化粧品開発を始めるきっかけになったそうです。
日本に帰国し、今後のキャリアプランと向き合い、「女性として私にできること」を考えた時に、これまでの経験から辿り着いた答えは、“女性が前向きになれるきっかけとなるものを作りたい”でした。

未経験から化粧品業界で日本初のリップをつくる

SDGsやエシカルの考え方が少しずつ浸透してきた昨今。しかし今でも、プラスチックによる海洋汚染は深刻で、日本では年間850万トンものプラスチックのごみが海に流れ込んでいるといいます。しかしながら、化粧品の容器の99%がプラスチックを使用しているそうです。環境汚染や動物実験の上で作られた美しさは、果たして本当の美しさと言えるのでしょうか。Menaryの赤リップ「BENI」を作る際、味や質感、サイズ感はもちろんのこと、プラスチックフリーのリップを目指しました。

また、未経験でコネクションもない状態から始まった商品開発は、新しいことへの挑戦の連続でした。日本で口紅が作られる過程では、プラスチックの型枠があり、そこに口紅の原料を入れていくシステムがほとんどです。日本では作られていない容器の形や紙を素材として、共に一から作り上げてくれる企業を見つけることからスタートしました。最初は話しすら聞いてもらえず、化粧品開発への壁の高さを感じました。
時間的にもコスト的にも苦労することはたくさんありましたが、“私が作り上げる意味”を常に考え、決して妥協はせず、300社以上の企業へ提案を重ねた結果、ようやくカタチにしてもらえる企業と出会うことができました。

BENIに込められたメッセージ

Menaryの赤リップ「BENI」のコンセプトは「エシカル×エンパワーメント(自信をつけるという意味)」。赤いリップは自然と女性を内面から輝かせ、自然と“赤いリップをつけている私”になれる。それは、赤いリップがもたらすエンパワーメントの力です。
流行りのメイクで周りと同じになるのではなく、女性たちが本来持っているそれぞれの美しさに自信を与えてくれるのが赤リップ「BENI」です。
ありのままの自分を愛し、自分らしく胸を張って生きていく女性を増やしていきたいと考えています。

2021年度 ビジネスプラン部門

最優秀賞

小さな宿と旅のファンを結ぶ ~やどふぁん~

株式会社 たびふぁん
西岡貴史 さん

コロナ禍の中小宿を救う旅好きのニッチな需要発掘ビジネス

コロナ禍を経て人々の旅行に対する価値観が少し変化しました。大きな旅行から小さな旅行へ変化し、近場の旅行を楽しむ「マイクロツーリズム」も普及しました。そこからヒントを得たのが、西岡さんのビジネスプラン「やどふぁん」です。人気の宿・観光地に多くの人を送る、という今までのモデルではなく、ニッチな宿・観光地に興味を持った人を案内し、旅行市場における「旅のロングテール」という新たな需要を掘り起こすものです。

西岡さんが宿泊した小さな宿での体験がきっかけでした。その宿に泊まっているのは西岡さん1人だったのに、隣の旅館は満室。ではその宿の質が悪かったのか?というとそうではなく、おもてなし、眺望、接客、料理、全て良かったとのこと。この状況に疑問を感じ、実際にたくさんの宿を巡り、調査を開始。すると検索エンジンでの表示順位が宿の資本力に影響されてしまい、いい宿でも「ニッチで資本力が弱い宿=認知度が低い宿」であるという状況がわかりました。

そこで、小さな宿と旅のファンを結ぶために考案されたのが「やどふぁん」事業です。検索エンジンの表示順位ではなく、ユーザーからの「いいね」の数で決まるSNSを告知ツールとして使用。マイクロインフルエンサーを活用し、旅行者視点の投稿で宿の魅力を知らせることができます。
「ワクワクで旅をデザインする」をビジョンに掲げ、「旅そのものが、最大の地方・地域活性だと思っています。」という西岡さん。「地元の人から見た魅力ではなく、余所者だからわかる魅力を伝えていければ、地元の人が分からなかった新しい価値も生まれるのではないか」と未来への期待を語られました。

「三鷹」という土地で受賞でき、新たなアイデアも生まれた。

ビジネスプランコンテスト自体は、いくつか応募した経験があった西岡さん。「みたかビジネスプランコンテスト」は、事業内容や事業場所が三鷹という土地に関係がなくても応募できるという取り組みが面白いと感じ、応募されたそうです。
小さい地域や宿がビジネスのテーマのため、コロナで実証実験ができない時期がありました。地方ではないと事業が成り立たないのか?都市圏でも地方と同じことが成り立つのか?と何度も仮説を立て考えたそうです。優秀賞を受賞したことで行政とも繋がりができ「三鷹でもこのモデルは実現できるのではないか?」と感じ、三鷹を「旅の出発点」と捉える新たなマイクロツーリズムのアイデアも生まれました。

さまざまな観点で感じた、コンテストに挑戦する魅力。

「三鷹市はインパクトがある町で、文化的に魅力のある街だという面白さがある。応募者に対して門戸が広いので、チャレンジする場としてとてもいいコンテストだと思いました。」と語る西岡さん。
技術的な側面ではなく、事業の「価値観」で評価してもらえたことも、自信につながるポイントだったそうです。
「審査委員の方からフィードバックをいただき、事業の魅力を新たな観点から相手にわかりやすくまとめることができました。チャレンジをきっかけに広がる可能性もたくさんあると思います。」と背中を押すメッセージを語られました。

優秀賞

マイカーがあれば誰でも広告収入が得られる「With Drive」

株式会社 Essen
橘健吾 さん

広告効果が見えないオフライン広告の課題にひとつのソリューションを

車両屋外広告サービス「With Drive」は、所有の車両に広告を掲載して収入を得たい「ドライバー」と、広告を車両に掲示して認知を広げたい「広告主」をつなげる革新的な広告プラットフォームです。

以前より車で旅をするのが好きだった橘さんは、東京大学大学院の入試勉強旅行をしている最中、スポンサーを得ながら自転車で日本一周をしている人を見かけ、それが今回のビジネスプランのアイデアの種になったそうです。その後、コロナ禍で時間的余裕が生まれた時に、「一緒に何かやりたい」という有志の仲間たちとアイデアを持ち寄ったことが事業の具体化へとつながりました。

「Web広告に比べ、街にある看板などオフライン広告は効果測定が難しい。そのため広告を掲示する側もPDCAが回しづらく、広告運用が困難な分野です。そこで「With Drive」では、ドライバーが持つアプリから共有された走行情報と、人や車の流れが分かる空間統計データを用い、広告が閲覧された場所や回数を可視化できるようにしました。」と語る橘さん。

ドライバーは「With Drive」のサービスに登録した後、車両に広告シールを貼り付けます。対象エリア内で広告価値が発生するルートを走行すると、ドライバーが広告収入を得られる仕組みです。個人・法人問わず、車を持っている人なら誰でも広告塔になれます。しかも、AIデータを用いることで、オフライン広告では実現しにくい「ターゲティング」も可能にしました。

全国展開に向けた足掛かりとして受賞が大きなステップに

現役の東京大学院生である橘さん。東大のキャンパスが三鷹にあり、今回のコンテストの告知を偶然目にしたのだとか。
2021年8月に法人を設立。今までは神奈川県川崎市を提供エリアとして絞り、川崎市内の様々な企業で利用されていますが、今後は東京、そして全国へ展開を構想されているそうです。「東京都でサービス提供を始めるにあたって、都心より車の所持率が高い郊外にスポットを当てています。三鷹が東京展開の拠点になるといいですね。」と語る橘さん。
また、アプリのリリースからほどなくして、ベンチャーキャピタルから資金調達をすることにも成功。「受賞」という信頼性が、資金調達の弾みにもなったそうです。

コンテスト応募で自らの成長促進を。

トータルで4つのコンテストに応募したという橘さん。「知名度を上げることや、外部への壁打ち、フィードバックによりビジネスプランを洗練させることなど、応募の目的は様々だと思いますが、やはり人に見てもらうこと、行動することが、とても大切だと思います。応募の準備だけでも事業のブラッシュアップになります。せっかく応募するのであれば、自分たちの成長のためだと思って力を込めるといいですね!」と熱いメッセージを語られました。

優秀賞

3Dフードプリンターで作る「パーソナライズ栄養食」で現代栄養失調を救う

Byte Bites株式会社
若杉亮介 さん

大学生の頃から3Dフードプリンターの研究に携わってきた若杉さん。「これまでみたことがないような食体験を広げる」をテーマに研究を進める中で、看護領域や教育領域など、他の分野でも価値が発揮されるのではないか、と考えられたそうです。

そこで生まれたアイデアが、「3Dフードプリンターで作るパーソナライズ栄養食」です。飽食の時代と言われている現代ですが、近年栄養障害に陥る人が増えているといいます。太っていても低栄養だったり、カロリーは足りているが栄養素が偏っているなど、「現代版栄養失調」といわれ問題視されています。「現代人は一人ひとり食べているものが違うため、栄養の偏りもそれぞれです。しかし、今の栄養食品は画一的なものばかりです。個別最適な栄養素が求められると思います。3Dフードプリンターは、使用する素材を切り替えることができるため、その人に合った栄養食品を作ることが可能です。従来の大量生産とは異なり現代の需要・社会問題とマッチするのではないかと思い、ビジネスプランを考えました。」と語られました。

「未来の食を現実に」をビジョンに掲げ、魚のすり身を印刷した「3D構造体おでん」の試食会や、特殊な形で食感をデザインしたチョコレートの販売など、ユニークな企画を行ってきました。「食感のデザインの研究が進むことで、単調になりがちな介護食の食体験を豊かにする可能性があるのではないか。「食」はこれからDXの開拓のしがいがある領域だと思います。」と今後の展望を語る若杉さん。2022年8月には「School of Food Futures」という、未来の食をテーマにしたイベント(京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 主催)に、ゲスト講師として登壇される予定です。

審査でのフィードバックや事務局対応がありがたかった

みたかビジネスプランコンテストは、若杉さんがパーソナライズ栄養食で事業化し、起業するタイミングとちょうど一致したため応募を決めたそうです。「ひとことで現代版栄養失調といっても、性別や年代によって抱えている問題が異なります。どこに注力してやっていくのか?など、事業へのフィードバックをもらえたことがとても有益でした。また受賞後も、資金面での困りごとなど具体的な相談や副賞の代替案として、ものづくり施設の借用など、迅速にアレンジしていただけました。地元の銀行とのつながりもあり、事業化する上で全体的に相談がしやすく、親身になって考えてくれたことがとてもありがたかったです。」と喜びを語られました。

応募することで事業化のベース作りを

大学卒業後から様々なビジネスプランコンテストに応募したという若杉さん。「三鷹のビジネスプランコンテストは様々な地域から参加しやすく、オープンなビジネスプランコンテストでした。動画審査は、事前にレクチャーがあり、事業化するための基礎を作ることができました。応募する際もテンプレートがしっかりあって、自分のアイデアをそこにどう落とし込むかを考えることで、具体化できました。」と語る若杉さん。ひとりで事業化を進めるのは大変なこと。壁打ちや外部からのフィードバックの必要性など、ビジネスプランコンテストへの応募の利点を語られました。

優秀賞

「reanne」生理を可視化するデバイス

reanne
浅井しなの さん

婦人科系の病で苦しむ女性をひとりでも減らすために~「生理」を可視化するデバイスで「第二次生理革命」を。

中学生の頃から意識が飛ぶほどの生理痛と付き合ってきたという浅井さん。大学生の時に婦人科を受診したところ「子宮腺筋症」が発覚。放置していたら子宮を摘出しなければいけない病気であること、また、卵巣の年齢を表す数値(AMH)が閉経間近ということも告げられ衝撃を受けたそうです。「もっと早く受診していれば、早い段階で病気の進行を遅らせることができたはず…」そんな気づきから、同じような悩みを持つ女性を救うための事業を立ち上げようと考えました。それが、「reanne(リアンネ)」です。

「reanne」には、かつて日本初のナプキン「アンネナプキン」が女性たちに革命を起こしたように、新しい生理との付き合い方を提案し「第二次生理革命」を起こす、という意味が込められています。一口に生理と言っても、悩みや問題は色々。起業しようと決意した時から、さまざまなプランを考えたそうですが、根本的な問題解決のためにたどり着いたのが「生理を可視化するデバイス開発」でした。経血の量や成分を検知し、その時の健康状態をスマートフォンアプリで見えるようにするものです。

病気の発覚後、浅井さんは生理の悩みをTikTokで発信していました。そこでフォロワーから寄せられた悩みの多くが、「辛さをわかってもらえない」というものだったそうです。「生理の悩みは他人と共有するのは難しい。だからこそ異常にも気づけず、辛くても我慢している女性がたくさんいます。アプリをきっかけに、もっと自分の体と向き合ってもらえるようにしたい。」と浅井さん。
医療の分野でも、婦人科系の症状は未だ病気の原因や治療法が明確ではない現状もあります。「reanne」の事業を通じて集まったデータを研究に役立てることで、将来的に生理の悩みが消えてほしいという大きな目標を掲げています。

受賞をきっかけに想いが伝わり、心強いつながりができた。

起業していない段階のアイデアのフェーズで応募できるビジネスプランコンテストを探し「みたかビジネスプランコンテスト」を見つけたという浅井さん。コンテストに応募したことで、SNSなどでも反応があり、応援してくれる人が増えたとのこと。さらに「受賞」という結果を得られたことで、医療関連の企業や医者、母校である東京薬科大学の教授やIOTエンジニアなど、開発のキーパーソンとなる人たちと繋がることできたそうです。 ハードであるデバイスを作るという事業は、なかなかハードルが高く大変なこと。「まだ報酬があるわけでもなく、売上げも立てられていない段階ですが、想いに共感して“手伝いたい”という人が増えたことがとてもありがたいです。」と感謝の気持ちを語られました。

コンテストへの応募は、挑戦段階からとても意味のあることだった。

起業は代表者ひとりで全てを抱え、永遠に自分の中で完結しがち。コンテストに応募するには、事業計画書の提出などハードルはありますが、浅井さんは、書類審査などの締め切りがあることで、物事を前に進めるペースメイクができたそうです。
「審査段階で言語化することで、事業のブラッシュアップができました。初めて会った方に企画をきちんと伝える練習にもなったので、迷っている方はぜひ挑戦するのをお勧めしたいです。」と素敵な笑顔で語られました。

2020年度 ビジネスプラン部門

最優秀賞

純国産人工股関節で生涯歩き続けられる社会と健康寿命を実現したい

株式会社 カーム・ラーナ
代表取締役
中村 順一 さん

手術室で患者と向き合っている外科医だからこそ作れるモノを届けたい

「純国産の人工股関節で、国民の健康寿命を延ばしたい」と言う中村さんは、千葉大学で整形外科医として活躍されている現役の医師であり、研究者です。中村さんが接する患者さんの中には、歩けなくなることで寝たきりになってしまい、健康寿命を縮めてしまうという方も多いそうです。中村さんは整形外科医として多くの患者さんとかかわる中で、「医療現場にて直面した課題のすべてを満たす、より良いプロダクトを開発したい」と思い、千葉大学発ベンチャーとして会社を設立しました。

「現在、多くの人工股関節は輸入品です。安定供給という意味でも純国産の製品が必要だと考えています」と語る中村さん。股関節の異常を訴える患者さんは女性が多く、欧米人に比べ日本人女性の身体が小柄ということもあり、体格差のある日本人女性にあったサイズの人工股関節があればよいのではないかと考え、研究と開発を続けてきたそうです。

そこで誕生したのが、純国産人工股関節「ミルフィー」です。認可されてから2年半ほどの「ミルフィー」は、現在、特許や薬事申請を経て実際に患者さんの元へ届けられています。「先輩医師たちにも使ってもらい、改良点などを聞き、研究開発に反映しています。商品はプロダクトではなく、手術室の課題を解決する一連の流れであり、プロセスそのもの。このサイクルをどんどん回していくことが私たちの願いです。」と語る中村さん。生涯歩き続けられる社会を実現して健康寿命を延ばすこと、これを全国、そして世界に広めたいとの思いが、研究へとつながっているそうです。

より多くの方に知ってもらうために

「カーム・ラーナ」という社名は、“静かな”“落ち着いた”という意味の英語「カーム(Calm)」と、人工股関節に関わる単語でありリウマチを意味する略語の「(Ra)」、ご自身のお名前の中村(ナカムラ)から、女性が多い患者さんが接しやすい名前、そして多くの方に知ってもらえるように女性らしい響きをもつ名前、ということでつけられたそうです。

千葉大学で研究を続ける中村さんですが「西東京エリアでもこの「ミルフィー」を多くの病院で使ってほしい」という思いが応募のきっかけになったそうです。「三鷹はJRの総武・中央線の終点ということもあり、千葉の住民から親近感のある地名です」と語る中村さん。ここ三鷹が「ミルフィー」の西東京エリア進出の足がかりになること願っています。

ビジネスプランコンテストへ応募するみなさまへ

「会社としては儲けを出さなければいけないが、“自分のやりたいことをやる”というパッションが必要。損得勘定だけでは続かない。起業する人の持つ熱量が成功の鍵になります」と話す中村さん。2021年度みたかビジネスプランコンテストに応募する方みなさまへ「コンテストに参加することで、ご自身のビジネスプランがブラッシュアップされる機会にもなりますので、ぜひ、ご参加ください」とのあたたかいメッセージをいただきました。

優秀賞

紫外線対策教育と日焼け止め習慣化によるお肌の健康推進

株式会社 Sunshine Delight
代表取締役
伊藤 瑛加 さん

幼少期からの日焼け止め習慣を定着させます!

保育施設向けに紫外線対策教材と日焼け止めをセット販売する事業を展開する伊藤さんは、三鷹市在住の大学生。小さいころから農業をするお母さんの肌を見て、日焼け止めの習慣について考えるようになり、高校在学中に株式会社Sunshine Delight を設立しました。「生涯浴びる紫外線量の半分は18 歳までに浴びています。でも日本では、幼少期からの紫外線対策教育は定着していないいため、日焼け止めの販売が少量にとどまっています」と、今の日本の紫外線対策に対する現状を教えてくれました。

昨年、保育園と幼稚園合わせて15園でモニタリングを実施。保護者500人に調査したところ、86%が保育施設に日焼け止め設置を望んでいることがわかったそうです。「このニーズに向け、大容量ボトル型の日焼け止めと教材で日本に日焼け止め習慣を定着させます!」と、ご自身の事業への意気込みを語ってくださいました。

伊藤さんは保育園や幼稚園の先生や保護者の方からお話を聞くだけでなく、園児たちが実際に日焼け止めを塗っているところも見学するそうです。ご自身がプロデュースした動画や絵本の教材を使って、幼少期からの紫外線対策教育にも力を入れています。「紫外線問題を解決するには、自分で紫外線から身を守る習慣を身につけないといけない」と語る伊藤さん。「『ぬりぬりのうた』の動画(伊藤さんがプロデュースした動画)を観ながら、みんな楽しそうに日焼け止めを塗ってくれています」と嬉しそうに語ってくれました。

色々な方と出会いお話を聞くことで、プランがブラッシュアップしていく

伊藤さんのプランは、JAアクセラレーターで特別賞を受賞、株式会社コーセーが主催する共創事業のアクセラレータープログラムに選出されるなど、各所でも注目を集めています。高校在学中から、商品化に向け多くの方と出会い、話し合いをしていたそうです。「日焼け止めのボトルのパッケージデザインにしても、自分にアイデアがあっても、それを形にしていくのは難しいと思います。共創事業に選ばれたことで、プロの方たちと仕事が出来たことは大きな経験になっています」と語ってくださいました。

「『ぬりぬりのうた』の作詞は音楽関係のアドバイザーの方にお願いするなど、色々な方にご協力いただき、それらの支えがあって商品化することができました」と、ビジネスプランコンテストの参加を通じての出会いを嬉しそうに語る伊藤さん。

今年の3月20日の「日焼け止めの日」に本事業を本格スタートされています。

今回のビジネスプランコンテストに応募する皆様へ

「事業活動を進めていくうえで、社員は私一人ですが、コンテストやプログラムを通じてたくさんの人に支えられているので、人との繋がりの凄さを実感しています。既存の人とのつながりを大切にしながら、新たな交流の場を作っていってくれればと思います」と、今まさに体験していることを語ってくださいました。また、「地元のビジネスプランコンテストに応募できたことが嬉しいし、そこで受賞できたことが本当に嬉しいです」と三鷹への思いを語る伊藤さん。副賞として、サテライトオフィスの「サテラ三鷹」が利用できることにも満足しているそうです。

地域貢献賞

災害時住宅の課題を解決する「スクエアパネル」ビジネス

株式会社 海野建設
代表取締役
海野 洋光 さん

災害時の仮設住宅問題を解決したい

35年前、青年海外協力隊でアフリカに渡り、ザンビア工科大学の講師をしていた海野さん。当時海野さんはザンビアで、低所得者のために安くて簡単に出来るローコストハウスの研究をしており、何か安い物はないかとずっと考えていました。ところが、10年前の東日本大震災を経験し、安いだけではダメだということに気づいたそうです。

海野さんによると、災害時における従来の仮設住宅は、2年間だけ過ごすことを念頭に設計し作られているそうです。しかし現状は、多くの被災地で仮設住宅での生活が長引き、苦労されている方がたくさんいます。そうした災害時の仮設住宅問題を解決したいと、海野さんが考案したのが1.1m×1.1m、厚さ14㎝の「スクエアパネル」です。

「仮設住宅は“安く早く”というのが当たり前ですが、人が生活する場所ですので、生活環境のクオリティも上げなければいけないと思いました。予定より長く仮設住宅で生活している人もいます。鉄骨造ではなく、木造で出来ないだろうかと考え、生まれたのが「スクエアパネル」です」と着想に至った当時のことを海野さんは熱く語ってくださいました。実用新案取得済で、従来の災害時における仮設住宅の諸問題を解決した建築資材だそうです。断熱効果に優れているだけでなく、フォークリフトで物を運ぶ時のパレットと同じサイズに設計されているため、同じ形状で備蓄もしやすいというメリットもあります。

地元に根ざした建築業者と地域で災害に備えたい

昨年、海野さんが応募したビジネスプランは、「スクエアパネル」の販売だけでなく、このパネルを使った特許工法を建設会社向けにパテント契約するというもの。建設会社に向けて工法のノウハウや施工指導を中心に展開していく計画です。

「昨年、7月豪雨で被災した自治体から依頼を受け、2棟の避難住宅を建設しました。地元に根ざした建築業者が災害に備えるアイデアを伝え、地域で災害に備えてほしいと願っています。」と今の状況を語ってくださった海野さん。

「今は九州が中心ですが、三鷹を拠点に東京でも建材パネル販売と工法パテントのビジネスを展開していきたいと考えています」と三鷹への熱い思いを語ってくださいました。

コンテストへの応募は、自身のビジネスプランに自信が持てる

「コンテストに応募することで、自身のビジネスプランに自信が持て、特に「みたかビジネスプランコンテスト」では審査員の方々から的確な意見を聞かせていただき、よりブラッシュアップに繋がりました」と語る海野さん。「みなさんもぜひ、応募してみてください」と熱い応援メッセージをいただきました。

奨励賞

お金を学ぶことで生き方を学ぶ教室「StarBurst」

株式会社 バビロニア
取締役社長
野田 卓也 さん

コロナ禍の休校期間中に知ったお金の事、みんなにも伝えたい。

地元市立中学校に通う野田さんは、緊急事態宣言の中“中学生社長”となりました。休校期間中に、テレワークで一緒に過ごすお父さんと会話する機会が増え、社会のことをはじめ、金融や経済についても学んだそうです。そこで学び気づいたことを、友人をはじめ同世代の人たちにも知ってほしいと思い起業、株式会社バビロニアを設立しました。

小中高校生向けのお金を学ぶことで生き方を学ぶ教室「StarBurst」は、全12回。全回とも前半は、お金の稼ぎ方・使い方などの基本的な知識を学ぶ講義で、後半には、“中学生社長”を交えたディスカッションで学びを深めるそうです。将来自分がどのように生きたいのか、そして仕事を通じてどのようなことを実現したいか、を考えるきっかけを作ることを目的としたオンライン教室です。野田さんは「教室では、お金に振り回される人生を送るのではなく、人生の目的のための手段としてお金を扱え、お金と心の豊かさを手にできる大人になっていくことを目指しています」と起業への思いを語ってくださいました。

学校や友人から応援を受け、奨励賞を受賞

みたかビジネスプランコンテストの最終審査会の開催が、平日の午後だったため、担任の先生に相談したところ、「ぜひ、コンテストに参加してください」と、学校を早退することを許可してくれたそうです。野田さんが通う中学校の校長先生は、以前よりアントレプレナー育成の必要性を感じていたこともあり、ご自分の中学から起業する生徒が現れたことを嬉しく思っていたそうです。そういったこともあり、“中学生社長”として起業した野田さんを、学校としても応援してくれているそうです。

応募のきっかけも、公園で遊んでいたときに友人が市の施設から「社長になったなら、これとか応募してみたら?」と、みたかビジネスプランコンテストのチラシを見つけ、持って来てくれたからだそうです。そんな学校や友人からの応援を受け、野田さんはみたかビジネスプランコンテストへ応募、奨励賞を受賞しました。

コンテストに応募すること、これは挑戦です!!

「これは一つの挑戦です。僕が受けた時は周りがみんな大人で、とても不安でした。そんな僕でも賞を取ることができ、大きな自信に繋がりました。ここから僕が学んだのは、一歩踏み出す事、やってみる事が大事だということです。失敗などありません。全てが学びです。ぜひ、挑戦してみてください。応援しています」と、ビジネスプランコンテストへ応募するみなさまへ、熱いエールを送ってくださいました。

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